ゆきよちゃん|心の縄をほどく専門家からの手紙

ほどく、ゆるむ、自分に還る。 空海の智慧とともに綴る、あなたの心を自由にするメッセージ

#16 豆乳の海とポリマーの雪の向こうに、満月を見た話――空海の教えと共に #16

はじめに ―― 心は満月のようなもの

我が心は無色無形なりと雖も、
而も本来清浄にして潔白なること、
猶し満月の如し。

(『秘蔵記』)

心には色も形もない。
けれど本来は、曇りなき満月のように清らかなものだ。

空海のこの言葉が、ある日ふと胸に降りてきました。

それは決して静かな時間ではありませんでした。

床一面に広がった豆乳。
洗濯物を覆いつくすポリマーという名の白い粒。

そんな、にぎやかで、ちょっとした惨事の日のことです。

けれど、その白い景色の中で、 なぜか私は「満月」を思い出していました。


濁った川を、歌で渡ったあの日

かつて実家は、わたしにとって 「色のついた言葉」が飛び交う場所でした。

母の執着。
終わらない愚痴。
逃げ場のない車の中。

その空気に飲み込まれないように、
私はただ歌っていました。

歌うことで、心を「無色無形」に保とうとしていたのだと思います。

どれだけ助言しても、 翌日にはすべて元通り。

会話は空虚に繰り返される。

ある日、ふと気づきました。

「もう、聞かなくていい」

それは突き放すことではありませんでした。

自分の清浄を守るための、
静かな境界線でした。


「ドジ」という名の透明な爆発

時は流れ、今。

わたしの周りにいるのは、
支配もコントロールも嫌う子どもたちです。

不登校ではあるけれど、
驚くほど本質を見抜く。

その透明さは、ときどき
物理的な惨事を引き起こします。

父のために濾した豆乳は、
娘のヒラヒラスカートに薙ぎ倒され、
床いっぱいに広がりました。

さらにその日のコインランドリーでは、

パンツ型ナプキンが炸裂。

洗濯物はポリマーの雪に包まれました。

一瞬、怒りがこみ上げます。

そのとき息子が言いました。

「ママの采配ミスだよ」

ただ事実を、静かに。

その言葉に、ふっと力が抜けました。


満月を忘れた大人と、思い出させる子どもたち

私はときどき思います。

世の中の負の連鎖を、
ただほどきたいだけなのかもしれない、と。

実家という泥沼。
お酒という煙。

そこに閉じ込められ、
心の満月を忘れてしまう大人たち。

けれど満月は消えていません。

ただ、思い出していないだけ。

そんなとき、子どもたちは言います。

「おじさんも一緒にやろうよ!」

UNOのカードを配る。
ただそれだけの時間。

その瞬間、

「依存者」という影は消え、
ひとりの人間の顔が戻ります。

子どもたちは知っているのかもしれません。

どれほど煙に包まれていても、
その奥に満月があることを。


心は、本来汚れない

豆乳を拭き取りながら。

ポリマーを一粒ずつ剥がしながら。

私はふと気づきました。

心は汚れない。

失敗にも、
過去の出来事にも、
誰かの言葉にも、

本当は染まらない。

雲がかかっても、
満月は欠けない。


おわりに ―― 思い出すだけ

不登校でも。
ドジでも。
お酒に逃げていても。

私たちの心は、本来清浄です。

私はもう、誰かを救おうとは思いません。

ただ、

「忘れているだけ」

だと知っています。

だから、ときどき
その月を指さすだけ。

今夜もまた、

笑い声の向こうに、
静かな満月が浮かんでいます。


note元記事はこちら

この記事は、noteに掲載している

「豆乳の海とポリマーの雪の向こうに、満月を見た話――空海の教えと共に #16」

を、はてなブログ用に再構成したものです。

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